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空中から電力を得て動く携帯電話

2009/07/03 21:51

なんか、Nokiaが空中の電力だけで動く電話を開発みたいなニュースが出てて、いや、最初からジョークニュースだろうと思ってたらいろんなところでまじめに取り上げられてて、なんか、本当のニュースみたいで。

Nokia、とうとう狂っちゃったかな?(笑)

いやいや、もちろん、原理的には、可能なんですよ。と言うか昔からみんなが研究していて、まぁ要するに「めちゃくちゃ低消費電力のデバイスとめちゃくちゃ低損失の無線系」の開発だけがこの可能性のキモなんですけど、それにしても、携帯電話ほどの機器をまともに動かすのは、はっきりいって無謀、と言うか、まずありえないと言わざるを得ないわけで。

いやさ、発表文の中では、「空中から1mWを取り出して駆動した」と言っていますが、そりゃ、1mWも取り出せれば、動くに決まっています。それが現実的に不可能だから、みんな苦心しているわけですよ、もっと少ない電力で動くデバイスを、と。

簡単な計算です。件の発表では、300MHzから10GHzまでの空中の電波をくまなく受信、と言っていますが、ぶっちゃけ、この帯域内で、一番強力な電波は、間違いなくテレビ放送です。はっきりいってそれ以外のあらゆる無線通信の電波は、合算しても誤差にさえ寄与しないほど小さな電力。たとえば、目の前(5メートルの距離)においてある無線LANの基地局でさえ、0.0001mWの電力しか供給できません。1kmの距離にある携帯電話の電波はさらに2桁下。数百kmの距離の衛星からの電波なんて、さらに下です。この程度のものが10や100ほど見えたと言っても、まさに誤差以下。だから、「空中から電力を取り出す」と言ったときには、これはテレビ(とラジオ)放送波だけが唯一の頼りです。

ではそのパワーは、と言うと、たとえば、現在、東京タワーが発射しているテレビ・ラジオの全放送局分を合算すると、大体500kWほどになります。この東京タワーから5km離れた位置で、理想的な受信系で受信したときに取り出せる電力が、0.3mWです。すでに足りません。東京タワーから5km以内に住んでいる人なんて、このサイトの訪問者の中にだってどれだけいますか、ってくらいですよね。それでさえ、Nokiaの言う1mWは取り出せない。1mWを取り出すには、最低3kmより近い位置で、東京タワーが直接見える位置に受信機を設置しなければなりません。こんな限られた環境で、しかも、受信機技術が理論的究極に到達して、ようやくNokiaの言う1mWの取り出しが可能になるわけです。

しかも、アナログ放送が停波すると、東京タワーからの出力は100kW程度にまで落ちてしまいます。すると、直線見通し1.3km以内でないと理論的に1mWは取り出せません。5kmの距離ではわずか0.07mWです。テレビのアナログ→デジタルの動きは世界的ですし、デジタル化に伴って電力が大幅に削減されるのも世界中同じです。はっきりいって、空中に飛び交う電波は、携帯電話を動かすには余りに足りないし、今後さらにそれは減っていくのです。対してNokiaの人(?)は、将来的には5mW、20mW、50mWと取り出せる電力を増やしていきたいと語っていて、これはすでにオカルトの領域です。存在しないエネルギーを取り出そうと言うわけですから。

と言うようなことをささっと頭の中で概算して、ジョークニュースだろう、と結論したわけですが、なんか大真面目にやってるみたい。本当にやってるんですかねぇ。きっと、実験室環境で、TV塔から至近の環境を模擬して実験して成功した、と言う程度だと思うんですけど。記事中でも、TV塔から4.1kmの距離で小さなセンサーを動かせた、と言う事例が言及されていますが、おそらくこの程度が限界です。同時に専門家の見解として「無線パワーは距離に対して指数的に減衰する」(=この技術の実用性に疑問がある、と言いたいのかな?)と言うコメントも紹介されています。発射局からの距離、すなわち地理や経済活動に大きく依存してしまうと言うことです。少なくとも日本での、アナログ停波後には、役立たずの技術です。

これに比べれば、太陽電池を搭載した携帯電話のほうがよほど現実的かつ経済的。なにしろ、「太陽」と言う桁違いに強力で普遍的な放射源があります。もし普及するとするなら、間違いなく太陽電池のほうでしょう。まぁそれには、まだだいぶ改善しなければならない点がありますが。

そんなわけで、このニュース、続報がどうなるのか、そもそも続報があるのか、それ以前に本当にジョークニュースじゃないのか、今後何か情報がありましたらぜひ教えてください(他力本願)。と言ったところで本日はこれにて。




子供に携帯電話を持たすこと

2009/07/01 21:10

学校への携帯電話持込禁止の動きが全国で加速している模様。特に、マスコミが稀な悪用事例を挙げては「ケータイは悪」な風潮を作ろうとがんばっているようで、それに同調するような形で世論迎合型議員などの間で携帯電話をことさら悪者にしようという動きが加速しています。

まぁそもそもの話として、結局は親や教師が、しつけや指導で問題解決を図っていくべきところを、安易に道具を悪者にすることでその責任を回避しようという動きであるわけで、全く本末転倒な話なんですけど、こういうことは過去にも何度も繰り返されてきたことで、おそらく怠惰な指導者の本質的な性向なんでしょうね。その昔は「最近の子供の字が下手なのはシャープペンシルのせいだ」なんつってシャーペン禁止、なんていうことが真面目に言われていたこともあるくらいで、とかく、自分の責任を認めたがらない親や教師は道具を悪者にする傾向が強いわけです。

その理屈で言ったら、殺人に使われる包丁も詐欺に使われるATMも全て禁止にしなきゃならないはずなんですが、もちろんそんなことにはなっていません。所詮道具は道具、結局悪いのは悪用するその人なんです。子供が悪用していじめに使うから禁止、というなら、じゃぁなぜ、同じくいじめに使われている上履きと画鋲(笑)は禁止にならないのか、ということですよ。結局、指導者側の恐ろしいまでの勉強不足と無知が原因なんですね。「携帯でいじめをしているのはわかっているんだけど、何をどうやっているのかわからない、だから、何をさして『それは悪いことだ』と教えればいいのかわからない」というところから、とにかく面倒だから全部禁止にしちゃえ、ということになっているわけです。携帯持込禁止は指導者のサボタージュの象徴ともいえます。

さらには、マスコミがこれに便乗してセンセーショナルに取り上げ、「携帯電話には学校裏サイトと言う怪しいサイトが多数存在し、それが悪の温床に」と言うような報道を行う始末。こちらはこちらで、メディアとしての存在価値を携帯電話とインターネットに奪い取られそうになっているテレビ局の焦りとしか見えないわけですが、そもそも、単なるSNS(モバゲとか)の同級生コミュニティのことを「裏サイト」なんて表現することに、意図的な悪意を感じて、非常に気持ちが悪いです。

おそらくこの携帯電話=悪のブームも数年で去っていくとは思うのですが、とはいえ、このブームによって携帯電話業界がどのような被害を受けるのか、について、今回は考えてみたいと思います。長くなりましたが、ここからが本題。

まず、携帯電話の小学校への持込を全面禁止にする動きがあります。こうなると、当然、登下校にも持ち歩くことは出来ません。小学生くらいの子供に携帯電話を持たせる目的は、登下校中に連絡が取れるように、また、下校時直接塾に通うような子供の安否確認などに、ということが主な目的になるわけで、登下校中に持ち歩けないのなら、そもそも買い与える必要がなくなります。小学生向けの市場が一気に縮小することが考えられます。

たとえばドコモのジュニアケータイはかなりの数が出ていたと聞きます。おそらくそれに相当する市場がすっかり干からびてしまいます。さらには、そこから中高生になって一般端末に「成り上がる」機会も失われるわけで、加えて、中高生が携帯電話を所持していることに対しても大人は嫉妬的感情を以って同じく禁止の動きを見せようとしていますから、中高生に上がってからも新規に購入する機会はかなり減ることになるでしょう。

ということで、このブームが去るまでは、小中高くらいの年代の市場が当分干されることになりそうでうす。現在の携帯電話所持率は、小学校低学年が19%、高学年が26%、中学生が48%、高校生が91%という調査結果が出ています。これに対して、各学年の総数は、低学年が356万人、高学年が359万、中学生が361万、高校生が373万ほどなので、単純に比率を掛け算して合計すると、674万加入分の携帯電話需要が、影響を受けることになります。

もし禁止の動きがなければずっとこの比率を保っていると考えると、12年後にはそっくり674万回線分(実際には子供の人口は減っているのでもう少し少ないはず)が、禁止のために「契約されずに終わる」という可能性がある、ということです。また、12年後を待たなくても、今現在、禁止にされたことにより解約される分も多少なりともあるでしょう。

いずれにせよ「数百万回線」の単位の回線が影響を受けることになります。しかも、もっともアクティブで今後のARPUが大きく上昇するであろう層を含んだ数百万回線です。

さらに、柔軟な子供のうちに携帯電話に触れて、携帯電話がどんなサービスを行っているのか、どのように使うべきか、どうすればお得に使えるのか、ということについて学ぶ機会のない子供が大人になることで、大人になってからつまらない詐欺に引っかかったり過大な料金を支払う羽目になったり逆に便利なサービスを使うことが出来なくなる、という無形の被害が出てくることが考えられます。これは間違いなくケータイ社会に対する一つのマイナス要素です。

結局、子供の使用を禁止する→使わないまま大人になる→知識がないので指導できない→子供の使用を禁止する、と言うループになってしまうのが一番の損失で、これを避けるためにも、さまざまな動きを携帯電話各社が主体となって行う必要がありますし、実際、ドコモやKDDIではこういう動きがあるようです(ケータイ教室とかなんとか)。こういった啓蒙活動は、まさに「指導力の欠如した大人」を対象にして行うべきで、むしろ柔軟な子供たちは自分たちで自分たちなりにルールを作って柔軟に対応し、大人顔負けのケータイリテラシを発揮していたりします。こういう「携帯について自分で考える機会」を奪い取るのが「ケータイ禁止」なのですね。くさいものにフタ、と言うのは「不都合な事実を覆い隠すことで後々より不都合なことが起こること」を揶揄することわざですが、まさにケータイ禁止は「くさいものにフタ」なわけで、フタをした後、その下でケータイリテラシの低下と言うさらに不都合な現象が進んでしまうわけです。

禁止するのではなく、積極的に使わせること、そしてその使用方法をしっかりと観察すること(監視ではなく観察、個別の内容について踏み入った指導はあえてしない)、それとは別に、しっかりと道徳観・倫理観を持てるよう指導すること、これが重要です。子供がケータイでいじめや犯罪を犯すのは、「ケータイがあるから」ではなく「道徳観と倫理観が欠如しているから」だと言うことに早く気づいてほしいですね。そういう子供がそのまま大人になって、「ばれなきゃ何をやっても良い」とか「法律違反じゃなければ約束なんて守らなくて良い」とか言い出す大人や上場企業社長になっていくわけです。ケータイ云々以前の問題なんですけどねぇ、「いじめ」なんてことを平気でやれちゃう人間ってのは。手段の難易なんて関係ない。

と言うわけで、私はケータイ禁止論には真っ向から否定の立場で臨んでいます。こういうことを許すと、何か新しいものが出てきて、それを活用したいじめや犯罪が起こるたびに、無条件でその新しいものが禁止されると言う風潮が当たり前になってしまいます。そういう子供が大人になっていきなり新しいものに触れ、その利便性に取り付かれ、あるいは、見つけてはいけない「裏の利用法」を見つけたとすると、もはやとめられません。子供のころにきちんと学ばなかったそういう大人は、大人特有のより大きな経済力・影響力で犯罪行為に走る事になるわけです。新しいものは真っ先に子供に与えよ、が私の持論です。と言ったところで本日これにて。




カーナビ、カーナビ。

2009/06/29 21:00

やっとここまできましたか、という感じなんですけど、パイオニア新カーナビにウィルコム対応というニュース。

この中で、やっとですか、と思ったのが、

あ、今日は、携帯・PHSのネタじゃないです。いや一応そこは基本としてはいますが、ずっとカーナビを使ってきたカーナビユーザとしての一言ですので、興味のない方は読み飛ばしちゃってください。

この中で、やっとですか、と思ったのが、さらりと書いてある、「道路が開通する日にリアルタイムにデータを更新」って言う一言。そう、ようやく、ネットワーク経由での地図更新(もどき)が出来るようになったんですね。

パイオニア商品情報ページによると、実際にできるのは、あらかじめ開通予定のわかっている主要道路単位のみで、地図丸ごとの更新は年に2回だけ、かつ、PCに接続しなければなりません。たとえば、もっと小さな市街の小路やコンビニ・ガソリンスタンドなどの変更はリアルタイムには反映されず年2回の更新を待たなければなりませんし、その全更新についてもリビングキットとPC、そして、全データをダウンロードしちゃうので凄まじいダウンロード時間がかかります。とはいえ、内蔵の地図をネットワーク越しにある程度更新できるようになったのは、カーナビの大きな進歩と言えます。

昔から思ってたんですよ。せっかくネットワークにつながる機能があるのに、どうして地図の更新をオンラインで出来ないんだろう、って。今使ってるHDDナビ(パイオニア製)も、HDDを自分で取り外して梱包してパイオニアに送って更新を数週間待って送り返してもらったのを自分で取り付け、ということを、毎年しなければなりません。いや、毎年は必要ないんですが、やっぱり地図は最新に保ちたいし。

これにかかる費用は2万円とかその程度なんですが、ぶっちゃけ、価格なんてどうでもいいんですよ、年間2万円程度で最新地図を維持できるなら、安いものなんです。それよりも、手間なんですよね。更新のために里子に出している間はカーナビが使えないのが、本当に困る。なるべく遠出の予定のない時期を選んで、遠出の予定を入れないようにかなり前から予定を組んで、更新サービスが混雑する時期を避けて更新予定を立てて、なんてことをやんなきゃならない。これが本当にめんどい。

カーナビ商売は、ある意味地図情報が最大の価値で、古い機種については地図情報に陳腐化していただくことで買い替え需要を掘り起こそう、というのが、おそらくカーナビ業界の常識だった、ということもあるんでしょうね。私の持っているHDDナビはまだ更新が続いていますが、いつ更新停止となるかわかりません。更新停止となったら、おそらく買い換えざるを得ないでしょう。まだ使えるのに、もったいない。

ということで、ネットワーク越しの地図情報更新というのが出たら、年額2万円のサービス料だとしても惜しくない、と思っていたわけで、ようやくパイオニアのカーナビがそれに近いところを実現してくれました。

ただ欲を言うと、やっぱり、リアルタイムで地図情報そのものを更新してほしいんですよね。どういうことかというと、自車位置近辺の更新情報を移動に合わせてネットワークに問い合わせ、更新があれば自車位置付近の地図をごそっとアップデートしちゃう、ということを日々やっていてほしいのです。

また、パイオニアのカーナビには「ドライブプラン」という機能があって、あらかじめ出発日と出発地、目的地、立ち寄り地などを入力しておくとプランを作成してくれる機能があるんですが、たとえばこれで登録したら、その期日が来るまでにそのルートに当たる地域の更新情報を巡回取得して、こっそりアップデートしておいてくれるとか、もちろん普段のルート案内中も行く先々の更新情報を先読みしておいてくれるとか、そういうことが出来てもおかしくないんじゃないかなぁ、と思うんです。

地図の更新なんてめったにないので、発生トラフィックは基本的に更新確認問い合わせパケットだけ、更新があっても、せいぜい自車・ルートの周囲1km程度なのでそれほど大きなデータとも思えない。これだけで、よく走り回るところは自動的に最新版が常に保たれるし、全く行った事もない、行く予定もないようなところは更新の必要もなく、無駄なデータのダウンロードも発生しない、という、実にエコなシステムだと思うんですけど、やっぱり難しいんでしょうね。これをやるには、地図を相当細かい単位でモジュール化しておかなければなりませんし、そうするとルート探索のアルゴリズムにも大きなインパクトを与えてしまいます。何より、モジュール化してそれを保守する人手が大変。でもがんばってやってほしいなぁ、こういう更新方式。

ところで、今回のパイオニアの新製品以外では、こういう形での地図更新に対応したものは寡聞にして覚えがないのですが、他にありましたっけ。なければ、この機種に買い換えちゃいたいなぁ、なんて思ってたりします。もちろん、もっと先の機種ではもっと大胆な地図更新に対応してくれるかも知れないので、もうちょっと様子見(今のHDDナビの更新が停まるまで)したいところですが。

で、やっぱり、このサービスを利用するときは、ウィルコム回線を使うのが一番いいんでしょうね。他社は基本的に従量課金ですし、一回のデータ量はそれほどでもないけれど頻度は高い、というスマートループが基本サービスなので、やっぱり使い放題のウィルコムが望ましいところ。また、エアーナビに対応していたソフトバンクがひょっとするとスマートループの定額に参入するかと思ったら、全く手を出さないみたいなので、定額としての選択肢は今のところ一つしかない、ということになりそうですが、イーモバのエリアがもう少し広がったら、カーナビメーカも検討を始めるかも知れませんので、それが出てきてから価格見合いで検討してみるのがいいかも知れません。エリア最強のドコモ網を使ってくれるのが一番いいんですけど、ドコモから料金的な協力を取り付けるのはかなり難しいですしねぇ。

と言うことで、ようやくカーナビのネットワーク対応が本格化し始めて、これからが楽しみな一言なのでした。でわ。




JAXAがウィルコム採用

2009/06/24 21:23

JAXAがウィルコム採用っていう記事。卒業生の3割はJAXA(当時NASDA)に就職する、という研究室にいながらJAXAに行けなかった私としては(笑)、ちょっと身近な気分になるニュースです。

一応、JAXAでは、携帯電話+無線LANなFMCも検討し、比較した上でウィルコムになった、ということになっています。が、ちょっと前に書いたように、ミッションクリティカルな用途にISMバンド(2.4GHz帯)を使うなんてナンセンスすぎます。そういう意味からも、無線LAN内線なんて採用しなくてよかった。もしここで内線に無線LANなんて採用するようになったら、それはもうJAXAも地に堕ちたな、という感慨しか浮かばないわけで。

さてそれは置いておいても、最近、会社の内線代わりに携帯電話を使っている例が増えています。というのは、例の、社内音声定額っぽいサービスが各種あるから。しかしですね、はっきりいって、社内の内線に携帯電話(公衆電波)を使うってのは、実に筋が悪い。

携帯電話には携帯電話の、内線電話には内線電話の本分というものがあります。それを、あえて本分を破った使い方をすると、とたんにいろいろな問題が生じてきます。最近、PHS-PBXから携帯電話の音声定額利用内線に移行した会社を見たことがあるんですが、それはもう、業務が大混乱していました。

まず、携帯電話では、代表ピックアップができません。部にひとつくらいで代表ダイヤルイン番号があり、名刺にはその番号が刷ってあるようなところなんですが、従来なら、その代表番号にかかってきた電話を、在席中の誰でもが、内線PHS端末からピックアップできました。つまり、誰かがオフィスにいれば、代表電話は確実に通じたわけです。

ところが、内線電話が携帯電話に置き換えられてしまうと、話が変わってしまいます。代表電話に応答できるのは、その電話機本体だけ。もちろん、各個人の机に内線専用電話機があったりなんてことはないわけで、その代表電話機のところまで歩いていかないと電話に出られません。代表電話機の近くに人がいればいいですが、遠くにしか人がいなくて、しかも何人かがお互いに「あっちが取りにいってくれるだろう」とけん制し合ったりなんてことが起こり、業務が混乱することになってしまったわけです。結果として、古来ゆかしき「電話番」制度を復活することになってしまった、と、そういうわけです。

そして、携帯電話では「内線転送」ができません。代表電話にかかってきた電話は、結局外線で携帯電話に転送することになってしまうわけで、かかってきた通話と転送出通話で2本の回線を占有するし、代表にISDN-PRIを使っていたので携帯電話への転送は有料、結局コストは上がってしまうという本末転倒な結果になってしまいます。

というように、もともと内線に備えられている重要な機能が携帯電話システムには欠如していますから、携帯電話が内線の代わりになる、ということはありえないわけです。内線には内線のための機能の充実を図ったPHSというシステムがあるわけで、しかもこのシステムは、2.4Gといった干渉だらけの帯域ではなくもちろん携帯電話帯域のように一般の公衆利用者とシェアしているような帯域でもなく、1.9Gの専用帯域を与えられているわけです。利用者減で機器コストがやや高くなっている嫌いはありますが、それを除けば、これほど恵まれたシステムはありません。これを使わずに、あえて雑多な公衆通信のひしめく携帯電話や無線LANを使うことは、ナンセンスとか云々の前に、「もったいない」です。

もちろん、ウィルコムのW-VPNを採用したからといって、内線圏内ではきちんと内線PHSを使うようにしなければこの恩恵は半減、というか、公衆携帯電話を内線に使う愚を繰り返しているだけになってしまうわけで、ウィルコムさんには、W-VPNと内線PHSシステムは必ずセットでの導入をすすめていただかないと困ります。いまどき「電磁波が弱い」なんていうはるかに弱い理由付けでPHSを選ぶ企業なんてありませんから、それがPHSだから、という理由での選択を促すなら、必ず、内線PHSに与えられた数多くの恩恵を活かすべきなのです。

そういう意味では、まだそういう営業をしているという話は聞いたことがないですね。というか少なくともほんの数年前までは、ウィルコムの営業的には内線PHSを「敵」認定していたという話もあるくらいで(端末横流しなどの問題もあったのでしょうが)、相変わらず、どっかずれてるウィルコムの営業方針を考えると、こういう手はきっと今も打っていないんだろうなぁ、なんて思ったりもします。

一番いいのは、いろんなPBXに対応した独立した制御ボックスと内線PHS基地局をウィルコム自身が開発・販売することなんでしょうけど、そんな余裕もないんでしょうねぇ。PHSを盛り上げる動機を持つ唯一の会社としては、がんばってほしいところなんですけど。といったところで本日はこれにて。




イーモバイルがHSPA+開始

2009/06/22 21:23

イーモバイルがまた発表した、今度はくだり21Mbpsのサービスについての、解説。というか、まぁ基本的なポイントは以前のカタログ値と実効値の乖離に関する考察と同じなんですが、とにかくこれまた思い切ってやっちゃった感があります。

HSDPAの仕組みを簡単に説明すると、W-CDMAではHSDPAのチャンネル換算で16個のチャンネルを張ることができます。これは実は言い方としては逆で、HSDPAではCDMAによりチャンネルパワーを16個に分けたうちの一つを最小単位としている、とも言えます。

余談になりますが、この「分ける個数」のことを拡散率とも言いまして、これは結構好き勝手に変えられます。もちろん、たくさんに分ける(拡散率を大きくする)とチャンネルの通信速度は落ちるわけです。HSDPAではW-CDMAの限界である16にまでそれを下げています。

ということで、W-CDMAで利用可能な「電波の量」は、HSDPAシングル回線(約700kbps)で16個分。で、イーモバイルがやろうとしている21Mbpsサービスは、これを15個まで使っちゃうサービスです。

そう、いったん21Mbps利用者が使い始めれば、HSDPA以外、つまり音声に使える領域は、残り16分の1しか残っていない状態になる、ということ。

もちろん、こういうサービスはいったんやっちゃうと、後でやめました、はなかなかできないもの。つまり、イーモバイルは、音声をほぼ捨てた、と宣言したに等しいわけです。

また、最近のイーモバイルの実効速度は、都市部では1Mbpsに届かないことが多いのですが、これは、チャンネルの強度が足りなくて16QAMなどの多値変調が使えないから、というのが原因ではなく、完全に「コードとスロットが足りない」ことであることが推測できます。というのは、チャンネルの強度が十分な場所でも速度が出ないという事例が多いからです。

コードとスロットは完全に有限で固定された資源です。先ほどの「16個」というのが実はこの「コード」の数にあたり、7.2Mbpsサービスではこのコードを最大10個使うことで実現されています。また、HSDPAのチャンネルは2msごとに区切られた「スロット」に分かれていて、全スロット利用、2分の1利用(二人で共有)、3分の1利用(三人で共有)というような設定ができます。しかし、先ほども述べたとおり、実効速度は1Mbpsに足りないところがある、ということは、このコード、あるいはスロットが、一人の利用者に十分に割り当てられていない、ということを意味しています。たとえば、一人当たりコードが1個しか割り当てられないという状況や、3個割り当てられているけど3分の1スロットしか割り当てられない状況、ということが考えられます。少なくとも、10個フルに割り当てられている可能性は皆無です(それなら少なくとも3Mbps程度は出るはず)。

では、ここで「最大割り当てコード数を15個に増やしました!」と言って、速度は速くなるでしょうか。ありえませんね。そもそも10個でさえ割り当ててもらえないのに、その上限を15に増やしたからと言って、何も変わるとは思えません。「りんご10個まで取り放題だったけど、+1000円で15個まで取り放題にします!」っていう八百屋の店先にりんごが3個しかないわけです。
一応補足:もともと仕入れは16個あるんですが、「取り放題」につられてみんなでわっと取り合った結果店先には3個しか残ってない、という意味です。

唯一速度向上の目があるとすれば、変調方式が最大64QAMに上がったこと。これで、従来の1.5倍までは、理屈上は可能となりますが、ただでさえコード多重で干渉波が増えている状況で64QAMなんていう多値の振幅変調がまともに動くか・・・は、疑問と言わざるを得ません。自立分散で干渉波がなくクリーンな環境で通信できるウィルコムのW-OAM TypeGでさえ、64QAMが効く条件はかなり限られています。

と言う感じで、おそらく、コード・スロット不足でほとんど速度向上効果はないだろうと思われます。これがたとえば、複数波を持つドコモが、どこか専用の帯域を手当てして行うと言うのなら、その意味は非常に大きいのですが、1波しか持っていないイーモバイルでこれをやってしまうのは、結局はほんの一瞬の最大風速のためにHSDPA以外のサービスを実質的に捨てることを意味するわけで、技術的にはまさに「愚行」と言わざるを得ません。

もちろん、1.7GHz帯でもらったLTE向け帯域を占有してサービスを行う可能性もあります。この間もらった帯域、結局ソフトバンクとイーモバイルがごねまくってHSDPA系も使えるようになっちゃって、おそらくそのままなし崩しでLTEに向かわずにHSDPAで使い続けちゃう、ということになるだろうと思っています。総務省は相変わらず「人口カバー率」なんていうまったく実効性のない基準で事業展開の申請を認めているわけで、大都市の中心部にちょろっとLTE基地局を立てて、それ以外はごっそりHSDPAのまま、ということになるのは間違いありません。

ただ追加帯域でやるにしても、今度は設備投資がそれなりに必要で、おいそれとエリアは広がらない可能性もあります。にもかかわらず、7割を当初からカバーすると公言していますから、やっぱり現行帯域と新帯域、両方にまたがってサービスを行うのでしょう。となると、やっぱり音声ではほとんど帯域を使わないという前提がなければ15コードサービスは行えません。

まぁ、イーモバイルの音声の動きを見ていて、やっぱりこうなるのが自然なんですね。結局、公式のオリジナル端末は1機種だけ、後は適当に買ってきただけで、ほとんどの公式コンテンツが使えない実質のメーカブランド端末ばかりです。音声に力を入れていないのは明らか。加えて、音声は、品質維持が非常に難しい割りに、品質低下が素人でもわかるほどシビアなサービス。だから、いっそ音声は捨て、品質維持の簡単なデータ事業者になるのが、実は一番リーズナブルな選択なんですね。

というわけで、まぁ、現実的には速度向上効果はほとんどゼロだけどカタログをにぎわすにはちょうどいいのが、HSPA+の開始、ということで、対応局もあるし、とにかく先に始めちゃおうぜ、ってことなんでしょう。デモ環境では20Mbpsが出ても、それはちゃんとりんごを15個並べたから、当然なんです。実際にりんごが3つしかない公衆環境で、どのくらいの速度が出るか、見ものですね、といったところで本日これにて。