モバイルと固定ブロードバンド 上
2009/12/11 21:53さて再び質問箱より。「現在イーモバイルを使っているが、速度の低下が激しくセットのADSLも速度が出ない。XGPかWiMAX、あるいはいっそFTTHに乗りかえたいがメリットや弊害はあるのか、また、ADSLの速度が(フレッツに比べて)まったくでないのはなぜ?」
まず、なぜのほうからやっつけたいと思います。この方の場合、元々フレッツADSLの8Mタイプを使っていたが、イーモバイルの10Mに乗りかえたら、速度が極端に落ちてしまった、とのことです。
これに関しては、ADSLやその他ブロードバンドの解説サイトのほうが詳しいとは思いますが、簡単に言いますと、ブロードバンドの速度はアクセス線の速度だけでは決まらない、という重要なポイントがあります。
基本的に、固定回線のブロードバンドというのは、三つのネットワークが組み合わさって出来ています。(1)局舎から自宅までの光あるいはメタルの回線、(2)局舎より上のアクセス事業者のネットワーク、(3)アクセス事業者ネットワークとインターネットをつなぐプロバイダネットワーク、の三つです。
(1)の物理的な回線は、よほどのことがない限り、スペックどおりの性能を発揮できます。ADSLなら局舎との距離に応じた速度、FTTHなら近所の共有する宅との合計速度、これが確実に得られます。事業者やプロバイダを変えてもほとんど変わることはありません。
問題は、(2)です。実は、ほとんどの場合はブロードバンドの速度のネックはここで発生します。これは、アクセス事業者が、局舎に置いた収容装置からのトラフィックをプロバイダへ中継するためのネットワークです。通常は、地域ごとに局間光ファイバなどでいずれかの局舎に集約されそこに引き込まれた広域IP網のアクセス線でアクセス事業者のコアネットワークにつながっているような構成になっています。もちろんこのコアネットワークもたいていの場合は広域IP網で構成されています。
このとき、アクセス事業者はコスト削減のために、集約局からコア網へのアクセス線をケチる、ということを必ず行います。実際、全国カバータイプのキャリア品質広域IP網だと1Gbpsでも月数百万円もするようなことがあります。これが日本中の局舎に必要になるわけで、これだけで月数億円のコストが平気で発生します。あまり品質を気にしないアクセス事業者は、ここを削るわけです。
たとえば、1局舎に1000ユーザを抱える局舎を10局集約するとします。もしこの局舎に1Gbpsだけ引き込むと、1万人で1Gbpsを共有、つまり、一人当たり100kbpsということになります。しかし実際には、各加入者の利用パターンはばらばらで、全員が同時にアクセスするということは稀です。ですので、一人100kbpsしかなくても、「10Mbpsサービス!」とか言いつつ売っちゃったりするわけです。しかし、財務の厳しいアクセス事業者になるほどこの部分をケチるわけで、1局2000人に利用者が増えてもまったく増設せずに置いたりします。その結果、アクセス事業者ごとに速度が大きく変わることになります。
もちろん、(3)のプロバイダ網も大きく品質に影響します。しかし、プロバイダはたいていの場合、アクセス事業者が全国から集めてきたトラフィックを一箇所で処理するだけですので、全体の集線効果(利用者のアクセスがバラけることによる全体速度の抑制)も良く効くようになりますし、スケールメリットで回線コストも単価が低くなります(もちろんその分プロバイダ料金が安いので儲けも出ませんが)。
さて、ではこのアクセス事業者とは誰のことを指しているのか、ですが、ぶっちゃけて言うと、NTT東西、KDDI、イーアクセス、ヤフーBB、その他CATV事業者などです。ややこしいのは、この中のいくつかは、アクセス事業者とプロバイダを統合してサービスしていたり、アクセス線とアクセス網が一緒だったり別々だったりすることです。アクセス網とプロバイダの統合の代表はヤフーBBで、イーアクセス+イーモバイルも実質これにあたります。CATV事業者も大半はプロバイダと統合です。逆にアクセス線とアクセス網の統合型はNTT東西とCATV事業者とKDDIの一部。完全分離がKDDIとイーアクセスの残り。つまりCATVはほぼ完全垂直統合型ってことですね。
と、こういうわけで、アクセス事業者が変わると速度がてきめんに変わるのは、確かにそのとおりで、何しろ、自前で完全な地上網を持っているNTT東西(フレッツ)にかなう事業者なんてあるわけがありません。フレッツに関してだけは、(3)のプロバイダ品質がモロにユーザ速度に直結します。そのくらい、フレッツは無敵。また、フレッツは県間通信禁止という枷を負っているのですが、それは逆に、プロバイダは県ごとにアクセスポイントを持たなければならないということです。つまりプロバイダの集線効果が減るわけで、強いプロバイダと弱いプロバイダの間であからさまに差が出てきます。
逆に、自前の地上網をまったく持っていないに近いのが、ヤフーとイーアクセス。いずれも、NTT系の地上網をつぎはぎして独自網を構築している状態(一部は本当に自前になっているみたいですが)。であるため、NTT東西やその他長距離系・広域IP系事業者への支払いが収容地域ごとに発生してしまうため、それを削減するために、やはりかなり強引な集線をかけてしまっています。その結果、たとえば1Gbpsに1万人押し込む、なんていう上記のような無茶を結構やっているわけで、ちょっとした繁忙時間帯には速度が極端に落ちたりするわけです。
KDDIは良くわかりません。旧DDIの持っていた地上網はほぼすべてがマイクロ波網で、ブロードバンド用途には向きませんが、旧KDDが持っていた地上・海底網がどこまでブロードバンド向けに使われているのかも良くわかりません。意外と半分くらいはNTT系の地上網に依存しているかもしれません。
さてそんな感じで、フレッツからイーモバイル(イーアクセス)に乗りかえた場合、契約上の速度は上がっても実速度は落ちる、ということは往々に起こるといえます。実は私もこれは経験していて、というのが、アッカ(NTTcom系)を使っていたのですが、そのアッカがイーアクセスに買収された後、半年ほどの間に見る見る速度が落ちていきました。当初、12Mbps契約で6Mbpsほど出ていたのですが、今では同じ契約で200kbpsしかでなくなっています(リンク速度=メタル回線速度は9Mbpsで変わらず)。さすがに乗り換えを検討中です。
えー、ブロードバンドの話だけで長くなりすぎちゃったので、続きはまた今度。
2009/12/11 at 23:52:50
nifty+旧accaで6Mbps弱出ています。
イーアクセスにしたほうが安いのですが、面倒くさいのと遅くなったらどうしようというのがあったので、そのままにしていました。
やっぱりもう少しこのままにしておきます。
2009/12/12 at 0:37:04
> フレッツは県間通信禁止という枷を負っているのですが、それは逆に、
> プロバイダは県ごとにアクセスポイントを持たなければならないということです
むむ、今は県間接続も認可されているし、ISPも東西各1個所ずつ接続すればよくなったのでは?
実際にそういう接続形態も掲載されているようですが…
http://www.ntt-east.co.jp/databook/2009/pdf/2009_09-07.pdf
2009/12/12 at 0:54:00
> アッカがイーアクセスに買収された後、半年ほどの間に見る見る速度が落ちていきました。
> 当初、12Mbps契約で6Mbpsほど出ていたのですが、今では同じ契約で200kbpsしかでなくなっています
アッカとイーアクセスだと断然アッカの方が品質も保守サポートも上だったので速度に差が出るのは当然だと思います。
が、買収後にそこまで速度が落ちるって事は…イーアクセス側に巻き取ったか局舎内で相互接続しているかのどちらかでしょうねぇ。
2009/12/12 at 12:12:03
)FTさん
県間通信はあくまで例外・暫定措置という前提のようです。実際、県間接続を使うと、あきれるほど低速になってしまうらしいです(しかも高い)。それだったら、県間はNTTcomの広域IPで、というほうがよい、と聞きます。
2009/12/12 at 15:08:05
たしかKDDIは自営のアクセス網持っていたような…
それもNTT非依存型の光ファイバー網を使っていたと思います
日本高速通信の名残の高速沿いの光ファイバーとか、KDDの海底ケーブルとか
電力会社系、鉄道沿いの光でバックボーン構成してるから、ある意味NTT並かと
だからNTTよりも固定網が高コストだから固定系黒字と言っているわけで。