黒いページ企画17
やっぱりやめちゃったドコモPHSを斬る
なんていうかね、やっぱりやめちゃいましたね。ドコモPHS。
はっきり言って、普通の企業としてみれば、毎年何百億の赤字を垂れ流し続ける部門を維持すること自体が異常なことだと思うんですよね。ちょっとした大企業が毎年消し飛ぶほどの赤字。ここ数年で、最大1000億弱、最小でも200億の赤字を出していたわけで、これが例えば株式会社の株価の時価総額で言えば、電器小売の「コジマ」クラスの企業が毎年1〜数社消えていたくらいの赤字なんですよ。恐ろしいと思いませんか?。
こういうとんでもないことが許されるのも、そもそもNTTドコモという会社が、桁外れの益を生み続ける超優良企業だったからです。しかし、ここで忘れてはいけないことがあります。それは。
NTTパーソナル事業がNTTドコモに譲渡されたとき、公正な競争を維持するため、PHS部門は完全に独立採算で事業を行う、という基本合意があったということ。
にもかかわらず、ドコモはとんでもない赤字を垂れ流し、結果論として莫大な利益を生む携帯電話事業でその赤字を穴埋めしてきました。つまり、PHSという市場においては、一つの企業として採算を取るために削るべきところを削りぎりぎりの線で料金競争をしなければならなかったポケット・アステルに対して、ドコモは「何でもアリ」状態の経営が(結果論として)許されていたということです。
そして、何度でも言いますが、その最たるものが「@FreeD」です。
以前、表サイトで実験的に公開した試算コンテンツでも、@FreeDはとんでもない赤字にしかなりえないサービスでした。しかし、当時はまだ黒字になる見通しはあったんです。というのが、独自網化によるコストの削減。これは、今ポケットが一生懸命やっている「ITX化」と同じもの。つまり、交換局から交換機をバイパスして自前の網に引き込むことでコストを安くする、というやり方。もちろん大変な投資になってしまいますが、「設備投資に関してだけは独立採算としなくて良い」というドコモPHSに対する特例的な取り決めをうまく使えば、これも可能だったと思われました。もちろん、ドコモ自身も、そういう方法でコストを削減するから@FreeDが可能なのだ、と一部では説明していました。
それが、ふたを開けてみると、独自網化どころか@FreeDのために上位網に手を入れた部分はほぼゼロ。
これは、私が最近独自の情報筋から手に入れた情報なので正しいとは言い切れませんが、少なくともNTTへの接続料についてコストダウンを実現する技術的ブレークスルーは全く無かったらしいです。
つまり、私が試算したとおりのコスト構造のまま@FreeDを始め、サービスし続けていたということになります。これでは、天地がひっくり返っても黒字にはなりません。
しかしそれでも徐々に赤字額が改善していたのは、全国に30万ほどある基地局を次々ととめて固定費を削減し、販売コストの高い音声端末を店舗から撤去する、などといったネガティブなコスト削減を次々と行ったからです(誤解なきように言っておきますが、NTTへの接続料についても、技術的な改善は行っていませんが契約上のコストダウンはかなり行ってはいたようです)。
それでも、事実上非常に高い確率で赤字にしかならない@FreeDサービスは、はっきり言うと「貴重な無線資源を食いつぶす上、無尽蔵な資本的バックを前提として他社に不可能に近い競争を強要する、PHS総共倒れを招きかねない危険なサービス」であった、と再びここで言わせていただきます。
しかし、ようやくドコモはPHSをとめることを決心しました。
しかし、不思議なのは、なぜその決心をしたのかということ。ドコモにとっては、毎年数百億の赤字は微々たる物。それを続けることで他社の定額データ通信をけん制し続けられるのなら、「ドコモのブランドアップ費」として考えればたいした出費ではないでしょう。それなのに、ここにきて「赤字続きだからやめる」と取ってつけたように言い出したのはなぜでしょう。
私は、これは、FOMAによる定額データについて見通しが立ってきたからであろうと読みます。つまり、HSDPAによる、そこそこ競争力のある価格での定額データについて、見えてきたと思われるわけです。
HSDPAは、無線帯域の余っている部分だけを使う方式。なので、実際、定額データを開始しても、既存通信への影響は出にくいと言われています(当然その分スループットは落ちますが)。これが、定額で参入できる見通しがようやく立ってきたということだと思うわけです。
ということで今回の黒いページの締め。
やっぱり、ドコモPHS、FOMAのための単なる「つなぎ」だったんじゃないの?ってこと。企業として適正な価格でサービスを提供し、提供者・被提供者がお互いに益を得るという姿勢を無視した、アホのように損してもいいからとりあえず顧客を囲い込んじゃって、次のサービスの手が打てるまでつないじゃおう、ってだけのサービスだったんじゃないか、ってこと。もちろん、企業戦略としてそういうやり方が世の中には山ほどあることは分かりますが、ドコモの場合根本的に事情が違うのが、当初「適正な競争のため独立採算とすべし」という紳士協定があったということ。ドコモのやり方、これを完全に無視しちゃってますよね。
今となっては私自身こういった「将来の顧客候補が他社に逃げないよう使うだけ使って磨り減ったら捨てよう」というドコモのPHS事業に対する姿勢をある程度読んでいたことになるわけですが、今回、結局HSDPAの目処が立ってきたとたんに「PHSやめます」なんて言い出したドコモの姿勢を見て、@FreeDを選んだ皆さん、どうお考えでしょうかね?。
安くHSDPAの高速サービスが使えるならそれでいい?。
私は、安くもないし高速でもないと思いますよ(苦笑)。
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