DDIポケット・インターネット常時接続サービス Air H"

このページではDDIポケットの新サービス Air H" について、その仕組みの説明と展望を紹介します。
1.Air H"とは?

AirH" とは、DDIポケットが2001年6月に開始した新型モバイルインターネット接続サービスです。これは、既存のPHS網をそのまま利用した準常時および常時インターネット接続を実現する画期的なサービスで、アステル系PHSが一部地域で提供する常時接続サービスにたとえられることもありますが、根本的に異なる方法で常時接続を実現しています。そのため、全国で一斉にサービスインが可能で、現在フレッツISDNやケーブルテレビネットなどの常時接続サービスの提供されていない地域でも常時接続環境でインターネットが使えるようになりました。
2.Air H"のしくみ
AirH"では、PHSとしては初のパケット交換制のインターネット接続を使用しています。これは、基本的にはiモードなどでおなじみのパケットを使った通信とほぼ同じものですが、使用目的がやや異なります。これまでのパケット通信は狭い帯域を有効に利用し、またパケット単位での課金によって通信利用料の割安感を出そうというのが主な目的です。しかし、実際のところ、パケット通信は単文メールなどごく少ないデータ量の通信でのみ使われ、通常のインターネット接続は料金的に事実上不可能でした。これに対して、AirH"のパケット通信は、従来のデータトラフィックの間隙を有効に利用するためにデータを小分けにすることを目的に導入されます。そのため、従来のパケット通信のようにパケット単位で課金されることはありません。さて、では実際なぜ、そしてどのようにしてパケット通信を実現したのか見てみましょう。
Air Hの基地局構成
この図のように、DDIポケットの基地局には基幹網向けにISDNを二回線引き込み、また、無線インターフェースは32kbpsの回線が4回線あります。ISDNは、64kbpsのBチャンネル二回線と16kbpsのDチャンネル一回線からなっています。よって、合計256kbps+32kbpsの帯域を持っていることになります。一方、無線回線ですが、4回線のうち実際の通話やデータ通信に使っているのは3回線で、残りの1回線は制御用に使われていました。この制御用の1回線がポイントです。実際、この回線を流れる制御データは32kbpsの帯域のうち20分の1程度しか占有しません。つまり、残りの95パーセントは完全に遊んでいる状態である訳です。この遊んでいる帯域に注目して、ここにパケットデータを流してしまおう、と言うのがAirH"のコンセプトです。

無線区間回線の使用状況
従来用途 AirH"用途 速度
制御用 制御+パケットデータ 32kbps
通話・データ通信回線用 通話・データ回線+パケットデータ 32kbps
通話・データ通信回線用 通話・データ回線+パケットデータ 32kbps
通話・データ通信回線用 通話・データ回線+パケットデータ 32kbps

さらに、この表のように、これまで回線交換用だったチャンネルにもフレキシブルに、動的にパケットを流すことによりさらにパケット交換速度を上げることができます。これは、基地局から下側の無線区間はすべてDDIポケットのインフラなので、いくら使っても実質コストはほぼ0だからです。ただし、従来の通話や回線交換によるデータ通信の品質を保証するために、基本的に回線交換を優先し、空いているときのみパケットを流す、と言うような運用を行うようです。
一方、基地局で受け取ったパケットはどのようにして基幹網に送られるのでしょうか。こちらはご存じのようにNTTのISDNを利用しているので、NTTに対する接続料が発生します。ところが、実はBチャンネルは4チャンネルのうち3チャンネルしか使用しておらず、残り1チャンネル64kbpsが丸々あまっているのです。ここにパケットデータを流すことができます。

有線区間(ISDN)回線の使用状況
従来用途 AirH"用途 速度
通話・データ通信回線用 通話・データ回線+パケットデータ 64kbps
通話・データ通信回線用 通話・データ回線+パケットデータ 64kbps
通話・データ通信回線用 通話・データ回線+パケットデータ 64kbps
空き回線 パケットデータ 64kbps

このように、空き回線のみで32kbps型AirH"を2回線収容できますし、多くのAirH"が接続している場合は動的に従来の回線をパケット用に割り当て、帯域を確保できます。実際、すでに専用線的な使用をしているBチャンネルがあるため、かなりの低コストでAirH"サービスを実現できるとのことです。

3.Air H"の今後の展開

AirH"は、今後、さらなる高速の常時接続サービスへと発展する予定です。まず手始めに2002年3月26日には128kbpsの常時接続サービスが始まります。これは、従来のAirH"を応用しただけのもので、一つのカードの中に四つのAirH"受信機を備えて、最大4基地局に接続して合計128kbpsのデータ通信ができるというものです(下図)。
128kbps通信の概要図
さらに、128kAirH"を4つ束ねて512kbps通信を行うと言う構想も進んでおり、2001年5月のビジネスショウで発表されています。もちろん、これらの驚異的なデータ通信はすべて既存の基地局をそのまま使うので、地方では多少パフォーマンスが落ちるものの、全国で一斉に使えるようになります。

4.Air H"のできた背景・・・DDIポケットの強み

さて、このようにDDIポケットはデータ通信に関して画期的なサービスを次々とリリースしています。では、どのようにしてこれは実現できたのでしょうか?また、なぜ他のPHSではこのようなサービスが提供できないのでしょうか。その背景には、基地局に対する考え方の非常に大きな違いがあります。
PHSの基地局は、そもそもは家庭用コードレスフォンを屋外で使えるようにするための屋外局でしかありませんでした。そのため、出力も低く、PHSの使える屋内と屋内の間を補間するものでしかありませんでした。実際、旧NTTパーソナルやアステル系各社は低出力基地局を基礎に、屋外に家庭用親機を並べのと同じような基地局構成でした。一方、DDIポケットは当初からPHSを携帯電話に対抗する移動通信手段と位置づけ、高出力アンテナによる広いカバーエリア、安定した通話を実現してきました。さらに、将来的な通信の高度化に向けて、基地局をインテリジェント化し、ファームウェアの書き換えのみで様々な通信方法を実現できるように作ってありました。これが、今回のAirH"やさらなる高速通信を実現する鍵なのです。つまり、新しい通信方式が開発されれば、それをネットワーク経由で全国の基地局に直接書き込みできるので、全国で一斉にサービスを開始することができるのです。これに対して、たとえば64kbpsを提供している現NTTドコモPHSは、基地局を一つ一つ取り替えなければならないため、サービス開始から2年以上たつ今でも64kbpsで通信できる範囲が限られています。また、同じく64kbps通信ができる東京電話アステルは既存の基地局を使っていますが、その際、基地局側では32kbpsの通信にしか対応していないため、端末を二台使って別々に基地局に接続し、それを交換局で合成する、と言う方式を使って、改装部分を交換局のみに押さえるような工夫をしています。しかし、どちらの事業者も、今後新しいデータ通信サービスを始めるためには基地局の改装が不可欠で、大きな後れをとるものと思われます。また、アステル系地方PHS網ではすでに常時接続を開始していますが、ごく一部の地域のみです。これは、常時接続を実現するために、単に専用線を使ってNTTへの接続料をなくしただけのもので、NTT依存網の地方会社があるため全国展開は完全に不可能です。つまり、AirH"はDDIポケットだからこそできたサービスであると言うことができるでしょう。

5.Air H"の今後の位置づけ
AirH"は現在のところは32/64kbpsのみの、中速インターネット接続サービスと言ったところです。5月30日に始まった次世代携帯電話FOMA試験サービスですが、こちらも回線交換では64kbps、パケット通信では384kbpsという通信性能を誇ります。今後、AirH"はこのFOMAを競合サービスとして、対抗していくこととなるでしょう。今のところスペックを見る限りではFOMAの方が高速通信が可能です。しかし、サービスエリアは、AirH"は全国一斉であるのに対して、FOMAは少なくとも3年は全国展開は不可能との見通しが立っています。このため、3年間はAirH"がエリア的に優位に立つでしょう。また、AirH"は2年以内に512kbpsにスピードアップする予定で、FOMAが全国展開を終える前に速度的にもFOMAのそれを越えてしまいます。また、料金的にも64kbps回線交換ではFOMAの2割以下で、圧倒的優位にあります。さらに、FOMAで384kbpsの通信サービスを利用するにはパケット通信しか方法がなく、このため、非常に高額のパケット料金(0.05円/パケット;約5秒の通信で100円)が課金されます。このため、今後512kbpsサービスが始まるまでのAirH"の位置づけとしては、「超高速だが高額」なFOMA(他次世代携帯電話)に対する「やや低速だが安価」という、いわば「廉価版次世代携帯電話」とでも言うようなものになっていくことでしょう。このことは、下に挙げた表で比較してもらえると大変よくわかると思います。

参考:DDIポケットPHSとFOMAのデータ通信関係比較
DDIポケットPHS FOMA
回線交換データ通信速度 64kbps 64kbps
パケット交換データ通信速度 128kbps 384kbps
テレビ電話転送レート
(※DDIポケットは現行ではビジュアルフォンのみ)
32kbps 64kbps
回線交換料金(含TV電話) 10円/分〜 60円/分〜
パケット料金 無料(基本料に含む) 0.05円/パケット


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