ツインウェーブの仕組み

64kでなぜツインウェーブが働かないか


ということで、一部で解説して欲しいという要求がありましたので、そもそもツインウェーブとは何か、そして、なぜ64k通信ではツインウェーブが働かないのか、について、ここで説明してみたいと思います。

ただしっ!!

ここの解説は、あくまで私暇?人がツインウェーブという方法をPHSの規格上で実装するとしたらこうする、だから64kではこういう理由で使えないのだ、という説明に過ぎません。

つまり、DDIポケットのツインウェーブが私が解説した方法であると保証するものでもないですし、64kでツインウェーブが働かない理由がこれであると断言するものでもないということです。どうか、一オタクの戯れ言としてご覧くだされば幸いです。

1.ツインウェーブの仕組み

PHSでは、元々ハンドオーバ(TCH切替)という仕組みが規格に定められています。そのハンドオーバの方式にも様々ありますが、今回説明するツインウェーブのハンドオーバに用いられるシーケンスは、「簡略型」とでも呼べる、最も簡易なハンドオーバ方式であると考えられます。そのシーケンスは以下の通りになります。
※用語説明

PS・・・移動機、つまり、電話機の方のことです。
CS・・・基地局、公衆アンテナのことです。
TCH・・・通信に使われるチャネルの名前です。
CCH・・・制御に使われるチャネルの名前です。PHSの電波は、CCHx1 + TCHx3からなっています。
  • PS→切替元CS TCH切替要求(切替先CS/スロット番号などを指定することが可能)
  • PS←切替元CS TCH切替指示(切替先CS/スロットなどの指定)
  • PS←→切替先CS (同期)
  • PS←→切替先CS 通信開始

    概ねこのようなシーケンスで、ハンドオーバは行われます。

    さてではツインウェーブとはどのような方法のことなのか、について考えてみるわけですが、良くツインウェーブの説明にある、「現在の基地局と通信しながら切替先の基地局を探す」という言い方がされます。

    ただ、実際問題として、切替先の基地局を探すといっても、制御キャリアをまず見てそれからその基地局の通信状況を探り・・・というのは非現実的です。また、基地局の存在を感知するための定常間欠送信(報知情報)は基本的に1.2秒に一度しか送信されていません。これでは素早いハンドオーバは無理です。

    実際にやっていること、つまり「ツインウェーブ機能」といったときの、そのキモになる部分というのは、おそらく、上のシーケンスで言うところの三番目のシーケンス、「切替先CSとの同期確立」の部分までを、切替元CSとの通信を維持したまま行うと言うものであろうと思われるわけです。

    ということで、ツインウェーブの働きを以下順を追って説明していきます。

    以下説明図中の凡例:
    青線:通信中
    赤矢印:ハンドオーバ要求/指示
    桃矢印:ハンドオーバ要求/指示の切替先スロット
    緑矢印:同期中
    紫矢印:TCH追加要求・指示(後述)
    スロット構成は、第一スロット=CCH、第2、3、4スロットがTCHとする
    ツインウェーブ1(TCHx1)
    まずは、TCHを一本使って通信しているという状態。

    ツインウェーブ2(TCHx1)
    ここで、何らかの理由でハンドオーバが発生します。このとき、ハンドオーバ要求が切替元CSに向かって飛んでいくわけですが、このメッセージ中に今自分が使用中ではないスロット番号が指定されています。

    ツインウェーブ3(TCHx1)
    基地局からハンドオーバ指示のメッセージが帰ってきます。このとき、切替先CSの指定スロットが空いていればちゃんとそこを使うよう指定されているはずです。空いていないときは「ハンドオーバ要求拒否」が帰ってくるので、別のスロットを指定して再試行すると考えられます。

    ツインウェーブ4(TCHx1)
    ハンドオーバ指示を受け取ったら、接続先CSの指定スロットにおいて同期を行います。このとき、切替元CSの第2スロットとの間で行っていた通信はまだそのままです。

    ツインウェーブ5(TCHx1)
    同期処理が完了したら、先ほどの第2スロットでの通信を切断し、即座に第3スロットでの新しいCSとの通信を開始します。


    大体このような感じで、高速にハンドオーバを行うものと思われます。

    ここで一つお気づきかと思いますが、この方法では切替元CSと切替先CSが全く同じスロットタイミングで動作している必要があるということです。DDIポケットでは古くから干渉対策のために基地局間の同期が取られていたため、この方法を比較的スムーズに導入することが出来ました。余談になりますが、たとえばNTTドコモの高速ハンドオーバでは、64k対応局間でしか高速ハンドオーバが働きません。これは、64k対応局同士しか同期が取れていないためです。また、アステルでは基地局間の同期が全く取られていないため、無線機そのものを二台内蔵することで、切替先CSとの通信中にも切替元との通信を維持することが出来るようになっているそうです。


    2.64kでなぜツインウェーブは働かない?

    いよいよ核心です。なぜ、64k通信中はツインウェーブは働かないのか。

    これについては、私も結構悩みました。が、これが概ね正しい答えではないかというものを以下に示します。

    まず、64k通信におけるハンドオーバ手順についてですが、先と同じように示しましょう。

  • PS→切替元CS-TCH1 TCH1切替要求(切替先CS/スロット番号などを指定することが可能)
  • PS←切替元CS-TCH1 TCH1切替指示(切替先CS/スロットなどの指定)
  • PS→切替先CS-CCH リンクチャネル切替要求
  • PS←切替先CS-CCH リンクチャネル割当
  • PS←→切替先CS-TCH1 (同期)
  • PS→切替先CS-TCH1 TCH追加要求
  • PS←切替先CS-TCH1 TCH追加割当
  • PS←→切替先CS-TCH2 (同期)
  • PS←→切替先CS-TCH1 (呼設定などの処理ごちゃごちゃ)
  • PS←→切替先CS-TCH1 通信開始
  • PS←→切替先CS-TCH2 通信開始

    ざっと見ても、先ほどの通常のハンドオーバに比べてずいぶんややこしいですね。

    これだけでも高速ハンドオーバさせるのはちょっと厳しいと感じますが、実際に高速ハンドオーバをさせようとすると以下のような問題が起きてしまいます。

    ツインウェーブ1(TCHx2)
    初期状態。第2第3スロットを使って、64kの通信を行っている状態です。

    ツインウェーブ2(TCHx2)
    ハンドオーバを開始します。先ほどのシーケンスのままだとちょっとややこしいので、便宜上、通常のTCH一本の時と同じようにハンドオーバ出来るものと仮定して以下説明します。この図の状態は、現在使用中ではないスロット(第4)を指定してのハンドオーバ要求です。

    ツインウェーブ3(TCHx2)
    基地局より、第4スロットを使用してのハンドオーバを許可された状態です。ここから実際には新しい基地局との間でリンクチャネル確立がどうとかという処理を行います。

    ツインウェーブ4(TCHx2)
    新しい基地局の第4スロットで同期を行います。この同期が終われば第4スロットでの通信が可能になります。当然この間は、通信を途切れさせないために、第2第3スロットでの通信を維持したままです。

    ツインウェーブ5(TCHx2)
    第4スロットでの同期が完了しました。すぐに、64kハンドオーバの次の手順であるTCH追加を行います。このTCH追加手順を踏むことで、きちんと2スロット使っての64k通信が可能になると言うわけです。

    ツインウェーブ6(TCHx2)
    ところが、新しい基地局は、TCH追加先として第2スロットを指定してきました。PSでは、第2スロットを使用してまだ通信中ですので、通信を維持したまま新しいチャネルの同期を行うことが出来ません。ここで、ツインウェーブは破綻してしまいます。


    このように、「ツインウェーブは現存通信を維持したまま新しいチャネルとの同期までを先に済ませてしまう方法」と考えると、64k通信では破綻してしまうことになります。

    ということで、不可能というわけです。

    ところで。実はもう一つ、理由として怪しいと睨んでいるものがあるのですが、ここでは割愛します。64k通信のハンドオーバ手順に、32kの時のようないわゆる「簡略型」が無いことが大きく関係することなのですが、まぁ、その辺も怪しい、ということだけにして置いてください(笑)。


    えっ・・・どうしてこんなに細かいシーケンスを知ってるかって?。いやあの、その、なんというか、えーと・・・すみません、RCR STD-28 4.0買っちゃいました(核爆)。
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