AirH"と@FreeD、比較と選択のポイント!
0.序文
ということで、とうとう全国レベルで競合する二つのサービスが現れました。AirH"と@FreeDです。この二つのサービス、同じPHSでありながら、その実際はかなり異なったサービスになっています。この二つのサービスをここで比較し、どんな人にはどっちのサービスが合っているのかを勝手に考えてしまおうというコーナーです。
もちろん、比較は私の実体験による感覚的なものです。すべての人について同じ使用感が得られると保証するものではありませんので、その点だけ、ご注意くださいませ。
1.お値段
何はともあれ、まずは支払わなきゃならないお値段から。AirH"は、32kパケット(実質20kbps前後)で、4930円、方や@FreeDは64/32kPIAFS(実質は28or56kbps程度)で4880円です。いろいろ説明するまでもありませんが、@FreeDの方が圧倒的にリーズナブルに使用できます。また、AirH"の価格は年間割引のもの。年途中で解約できない(出来るけど違約金を取られる)なので、いつでも解約できる(つまり短期利用も出来る)@FreeDの方が、予算が立て易く変更も容易であるといえます。また、@FreeDには年払いプランもあり、こちらは48000円/年。こちらも、途中解約の場合でも月払い相当(4880円/月)の分だけ引かれて、返金があります。一方のAirH"には、高速サービスとして、128kつなぎ放題で8430円、また、定額ではないですが4930円で25時間まで128k/64k、3995円で24MBまで128k/32kというコースもあります。
2.エリア
やはりモバイルでの利用が前提での定額PHSサービスですから、エリアの問題も重要です。これに関しては、ほとんど差はない、と私は思い込んでいたのですが、私の勘違いでした。ちょっと言い訳:私はドコモPHSは仕事で使っていて、その範囲でエリアに困るということはほぼ無かったので・・・でも、考えてみると、仕事のために出歩く先って、ドコモ関係企業しかないんですよね・・・そりゃ認識が偏るはずです・・・。で、実際に@FreeDを持って、個人の趣味の範囲でいろんな場所をうろつきましたが、実際、愕然とするほどのエリアの差があります。ドコモPHSのエリアは、DDIポケットに比べるとあきれるほど狭いです。まず、都心部でも建物の陰などではすぐに圏外に落ちます。DDIポケットでもちょっと苦しいかなぁ、という建物の谷間、こんな場所では、ドコモPHSはまず役に立ちません。また、郊外はさらに差が激しいです。茨城の方に遊びに行きましたが、私の行く先はDDIポケットは100%エリア内(トンネルは除く)だったのに対して、ドコモPHSがエリアだったのは、行った先のせいぜい30%程度でした。
これは私の個人的感想ですが、ドコモPHSのエリアマップは、可能最大エリアを描いてあるようですね。一方、DDIポケットは、可能最小エリアを示しています。ですから、エリアマップ上でそれほど差が無くても、実際はドコモPHSはエリア内なのに使えない場所が多く、逆にDDIポケットはエリア外なのに使用可能なことが多い、ということになります。この差は圧倒的です。@FreeDの開始で定額でドコモPHSを利用できるようになって、この差をまざまざと実感してしまいました(これまで感じなかったのは、やはり時間従量だったため、あちこちで使ってみる機会が少なかったからでしょう・・・)。そういうわけで、都心郊外を問わず、エリアはDDIポケットが圧倒的です。
この辺、実際、基地局の性能差もかなり大きく効いている部分があります。出力自体は同じでも、DDIポケットの基地局の方が高い受信感度と複雑な地形に強い信号処理を持っているため、見通しでのエリア半径はもとより、都心の複雑な電波反射環境に置いても、その実質エリア半径はかなり広くなっています。
下の図は、実際に私が@FreeDとAirH"を使った場所での、最近基地局位置と、その場所での電界強度表示を示したものです。

どちらも4エレメントタイプですが、Dポは250mの距離でもアンテナ表示2〜5、パケットもほぼ理論値の速度が出るのに対し、ドコモPHSは150mしか距離がないのに完全に圏外、もちろん発着信不可でした。
このような差があるために、一基おけばエリア化が期待できる配置を取っても、結局ドコモPHSでは期待半径に達することが出来ず、郊外でのエリア不足や都心でのエリアの穴に繋がっている、と思われます。
3.通信速度
これは、先ほどの料金の話でも出てきましたが、AirH"32kでは実質が20kbps程度、一方@FreeDでは56kbps程度です。@FreeDが32kでしかつながらない場合もありますが、この場合も28kbps程度は出ます。この点で速度を単純に比較すれば、@FreeDの方が上です。一方、AirH"128kは、私の経験では大体96kぐらいが相場です。ただ、お値段が非常に高いので、単純な比較は出来ないですね。コスト当たりの速度という言い方をすれば、100%、@FreeDの方が優れています。
4.使用感
これは、速度とも絡んできますが、普通にWEB閲覧をしているときに感じる快適さとでもいいましょうか、そういうものです。レスポンス速度なんてのもこの項目に入ります。簡単に言うと、@FreeDの64kがもっとも使用感は良いです。ドーマントに落とさずに連続的に使っていれば、上下対称64k保証型ですから、もっとも快適に使えます。次点はAirH"の128k。レスポンスは悪いですが、絶対速度が違うため、コンテンツの種類によってはもっとも快適に使えそうです。以下は、@FreeDの32k、AirH"32kと続きます。また、多くのPDAでは、@FreeD64kを使うと、AirH"128kよりも速度自体も早くなるようですね。PDAで使うなら@FreeDのほうが良いようです。
この辺は、答えは簡単で、要はTCPのACKを返せるタイミングなんです。AirH"は上下非対称のパケットで、私が以前計測してみた感じでは、どうも上り方向は〜1秒程度の周期での間欠送信となっています。ですから、上から落ちてきたデータに対して、次のデータを要求するACKを返すのがかなり遅くなり、速度が落ちがちになってしまうみたいなんですね(そのため、AirH"アクセルではTCPwindowサイズをかなり大きくして、この問題を最小限にしようとしています)。これが、TCPwindowサイズが小さいPDAではかなり顕著になり、128kパケットと64kPIAFSの逆転が起こってしまうという訳です。ですので、windowサイズの小さいPDAでは、上下対称・連続送受信の@FreeDの方が快適に使える訳です。
また、ドーマントがらみでは、@FreeDはそれほど頻繁にドーマントからの復帰に失敗することはありません。ただ、たまに失敗すると、確実に1分以上は何も出来なくなってしまいます。64kトライと32kトライを合計するだけで1分はかかってしまう上、その後しばらくの間、接続が出来なくなってしまいます(接続に失敗したことにより、再度ネットワークをサーチ・位置登録のやり直し等をしている模様)。@FreeDユーザが多いと思われる場所に住んでいる方は要注意です。
あと、余談になりますが、PRINやDIONで提供しているVenturiサービス、こちらはを使うと、32kパケットも128kパケットも驚くほど体感速度が向上します。これは、圧縮による実効速度の向上はもとより、データをサーバ側に一度バッファリングし、それを最短距離で無線に流せるため、TCPパケットの行き違いによる時間的ロスが大幅に軽減されるためと思われます。このサービスを利用することで、32kパケットでも@FreeD64kに匹敵する使用感、128kパケットともなると、それを遙かに超える使用感を得ることが出来ます。ただ、私は移動しながらVenturiを使ったことがないので、移動中にも同程度の使用感が得られるかは分かりません。
5.移動性
これは、使用感の項目に入れようと思いましたが、ちょっと長くなるので別にしました。この移動性ですが、基本的には移動速度や周囲の状況によります。結論から言うと、全体的な傾向としてはAirH"の方が移動性にはかなり優れています。速度で40km/h程度(バス、各駅停車の電車程度)ですと、AirH"も@FreeDも静止時の使用感とそれほど差はありません。@FreeDもきちんとハンドオーバできますし、ドーマントからの復帰も順調です。これが、60〜80km/h(自動車、急行電車)程度の速度になると、やや状況が変わります。AirH"は全く影響無く使えますが、@FreeDでは、かなりの頻度でデータが流れない時間が出てきます。また、連続して使っていれば大丈夫ですが、ひとたびドーマントに落ちると、その移動速度のまま復帰するのは至難の技という感じです。電車などでは、駅に近づいて速度を落としたタイミングなどでようやく復帰に成功するという感じでした。更に速度を増し、100〜120km/h(高速道路、特急電車)となると、@FreeDは全く使えません。連続通信してドーマントに落とさないように苦心すれば、何とか数分は使えますが、ちょっとしたきっかけ(ハンドオーバ失敗など)でドーマントに落ちてしまうと、復帰は絶望的です。一方、AirH"はこの程度の速度でも快適に使えます。128kで使っていると、大体40〜50kbps程度の速度が平均的に出ます。
ちなみに、私が実験した常磐道ですが、三郷を出て100km/h程度の速度に上がったところで、@FreeDはドーマント落ち、その後、出口(谷田部)の料金所で停車するまでただの一度も復帰することはありませんでした。一方、AirH"は、日立中央で高速に乗った後、100km/h程度の状態で接続を開始して成功し、そのまま友部のジャンクションまで、全く問題なく快適に使用できました。
また、新幹線での利用は、上記のように、@FreeDでは使い物にならないと思われます。一方のAirH"は、以前の実験でも書いたように、宇都宮〜東京間のように、そこそこの基地局密度のある地域なら、かなり利用できます。
もう一つ、移動性の話として、地下鉄の話を入れておきます。AirH"の地下鉄での利用は千代田線での実験にも書きましたが、@FreeDも同じく千代田線で試してみました。結果、こちらも全く使い物になりませんでした。駅に到着したところでデータ要求を出してみるのですが、再接続中に電車が発車してしまい、結局ドーマントに落ち、その間にデータ要求はタイムアウトしてしまいます。どうも、地下基地局への位置登録&再接続が間に合わないようです。
この辺は、AirH"と@FreeDの根本的な仕組みの違いに原因があります。AirH"は、PIAFSと同じレイヤでパケットを実装し、回線共有・受渡・休止・再接続などの手続もすべて同じPHS(パケット)プロトコルスタック内で行っています。一方、@FreeDは、従来のPHSそのものの上に、ドーマントプロトコルをかぶせただけです。ですから、ドーマント関連の制御はPHS位置制御手順の範疇外となってしまう訳です。そういうわけで、移動に伴って、例え回線休止中でもきちんとリンク自体はハンドオーバできるAirH"に対して、@FreeDは、ドーマントになっている状態では下位のPHSスタックは単なる「待ち受け」になっているだけ、つまり、PHSスタックはリンクの存在そのものを知らないわけですからハンドオーバは当然不可能です。こういったわけで、高速移動中などでは、ドーマントからの復帰のために、通常のPHSが待ち受けから接続状態へ移るのに必要となる手順を踏んでしまうため、その間に基地局カバーエリアから出てしまい、失敗することになります。また、地下鉄の圏外補償の話でも、AirH"は圏内に復帰すれば自動的にリンクを回復しますが、@FreeDでは、PHS部分は単に待ち受け状態にある訳ですから、ドーマントプロトコルの方から明示的に再接続を指示する必要があります。一方、PHS部分のプロトコルスタックは基本的にドーマントプロトコルレイヤに対して下位のレイヤに当たるため、上位のプロトコルに対してドーマントからの復帰を指示することは出来ません。よって、PHSのプロトコルスタックがキャリアを検知して位置登録に成功しても、結局、ユーザが明示的にデータ要求を出さない限り、リンクそのものは復帰されない、という訳です。
この辺をもうちょっと突っ込んでみたのがこちらです。
*選択のポイント!
以上のように、いろいろな点で相違の見られる二つのサービスですが、これらをまとめて、どのようなときにどちらのサービスが適しているのかをざっくりと見てみます。
AirH"篇
AirH"は料金がやや高めであることから、明確な選択のポイントが必要でしょう。まず、もっとも大きいのは、移動中に使うかどうか。通勤電車の中などで使ったり、などといったニーズがある場合はAirH"が無難です。また、いつどこで使うことになるか分からない、というような場合もAirH"です。移動中のつながりやすさももちろんですが、@FreeDに比べてエリアがかなり広いので、どこに行くことになるか、いつ必要になるかが余り予想のつかないような人には、AirH"の方が適しているでしょう。金額的に余裕がかなりあるということだったら、128kを使えば、エリア・移動性・快適性のどれをとっても及第点以上は確実です。また、地方でなら、@FreeDは32kでしか使えない場合が多く、一方のAirH"は32kパケットでも他ユーザが少ないため、ほぼ理論値いっぱいの速度が出ることが多いです。そうなると、わずかな金額差で移動性とエリアに大きな差が出ることを考えると、地方ではAirH"の方がコスト的にも快適性においても有利といえるかも知れません。
@FreeD篇
64kbpsにしては値段が安い、このポイントだけで選んでも問題はないかも知れません。また、エリアと移動性の問題がありますが、自宅(あるいはある程度決まった数箇所)だけで使うと決まっているなら、@FreeDで問題は全くないでしょう。移動中は微妙ですが、PDAで快適にネットサーフィンしたいというような用途にも、@FreeDの方が向いているはずです。地方では、32kエリアが圧倒的に多く、その点ではやや不満があるかも知れません。逆に、主に東京近郊で使うなら、大概は@FreeDの方が便利です。それは、かなり広い64kエリア、移動手段の乗り物のほとんどが比較的低速移動であること、等から、@FreeDでもAirH"に劣る部分がほとんど無くなるからです。また、地方でも、32kでしかつながらないということが、逆に回線の輻輳を起こりにくくする効果があるので、接続性はそれなりに確保できる可能性が高いです。32kでも良いからギャランティな接続を得たい、という場合も@FreeDはそこそこ使えると思われます。
*注意のポイント!
逆に、それぞれのサービスを使う上で、こういう状況であるなら注意が必要、とか選ばない方が無難だというところをまとめてみます。
AirH"篇
主な利用目的が会話型サービスの場合は、レスポンスが遅く使いにくいことが多いです。認証の必要なサイトを多用する場合も、快適性が極端に落ちます。特に、VPNなどを使うと、AirH"では処理がタイムアウトしてしまうほどレスポンスが悪いです。また、TELNETやFTPなどもやや動きが悪く、ストレスを感じる可能性があります。都心、特に新宿界隈では、非常に多くのAirH"ユーザがひしめいているため、128kでも使い物にならない時間帯が存在します。@FreeDの登場でどのくらい緩和されるか分かりませんが、23区内の住宅街で22〜24時、ビジネス街で12〜13時、17時〜18時は速度が極端に遅くなります。このような場所・時間で使いたい場合は要注意です。
@FreeD篇
高速移動では使い物にならないので、そのような要求がある場合は注意が必要です。また、特に64kエリアでは、今後輻輳が非常に激しくなってくる可能性があります。あまり移動せずに固定して長時間使うような人が集まる場所(住宅街など)では輻輳により接続できなくなる可能性もあります。地方だけでなく、都心部にも32k限定エリアやエリアの穴がたくさんありますので、使う予定の場所が確実に要求を満たせるか(圏内、64k対応など)が確実でない場合は、事前の十分な調査をするか、AirH"にしておいた方が無難かも知れません。
ということで、適当にまとめてみましたが、要望があればさらにいろんな視点から比較してみたいと思っています。取りあえず、今回は自分の体験の中から思いつく限り挙げてみたベータ版ということで。
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